眼球の表面を保護する役割を持つ涙液の分泌量が低下したり、質が悪くなることにより、眼球に障害を生じる病態をドライアイといいます。
涙液は上眼瞼の外側にある涙腺という部分から分泌されます。瞬目(まばたき)をする度に涙腺から涙液が分泌されるようになっています。涙液は眼球の表面を保護し、約10%が蒸発します。残りの涙液は眼瞼の内側にある涙点という部分から涙小管、涙嚢、鼻涙管を通り副鼻腔へと排出されます
涙液は角膜側からムチン層、水層、油層の3層の構造をしています。
涙液は角膜表面に酸素や栄養分を供給しています。また眼球表面の乾燥を防いだり細菌の侵入を予防する働きがあります。また角膜表面や結膜に付着した異物を洗い流す作用があります。
ドライアイの症状としては眼精疲労、痛み、眩しい、乾燥感、異物感、充血、視力低下、流涙などがあります。
涙液の分泌は一般的に年齢とともに減少していき、女性の方が乾燥しやすいという傾向があります。その他の外的な原因としては室内の乾燥、パソコン(PC)画面の長時間の使用、コンタクトレンズの使用、ストレスなどが挙げられます。内的な要因としてはシェーグレン症候群というリウマチの1種や、眼瞼にある脂を分泌するマイボーム腺が詰まってしまうマイボーム腺梗塞などもドライアイの原因となります。また近視矯正手術であるレーシックを受けた方は、角膜表面の知覚が低下するためドライアイを発症しやすくなります。
視力、眼圧といった眼科一般検査に加え、次のような検査を行います。
瞬目の後、角膜表面の涙液層が無くなるまでの時間を計測します。正常では5秒以上ですが、ドライアイの患者様では短くなります。
眼球表面を特殊な染料で染色して青色のライトを当てて角膜表面の傷の有無を確認します。
涙液の分泌を測定する試験紙を下眼瞼の縁に挟み込み、5分間の涙液の分泌量を測定します。正常眼では試験紙上の涙液の分泌量は10mm以上になります。ドライアイの患者様では5mm以下になります。
ドライアイを改善する方法としては以下のような項目があります。
室内の空気が乾燥しないように加湿器を使用したり、エアコンなどの風が直接、眼球に当たらない様にすることが大切です。また長時間、モニターなどを使用する場合はモニターを視線より低い位置に置くようにして、意識的に瞬目をするようにします。コンタクトレンズを使用している場合には装用時間を短めにし、マイボーム腺を閉塞させるようなアイメークは避けましょう。
ドライアイの症状が強く角膜障害を生じている場合には、角膜保護剤の点眼を使用します。点眼薬を頻回に使用することにより、不足している涙液の作用を補います。
角膜保護剤の点眼でも症状や病状が改善しない場合には、涙点プラグという器具を使用します。涙点プラグとは涙点に小さなシリコン製の蓋をして、涙液が涙点から排出されないようにする方法です。
涙点プラグで異物感を感じる場合には『キープティア』というゼリー状のコラーゲンの物を涙小管に挿入する方法があります。ただしキープティアは2〜3ヶ月で消失してしまいます。